みなさんおはようございます。第26回の放送はいかがでしたでしょうか。非常事態で使うドイツ語をご紹介します。今日は「助けて!」です。できれば使いたくない単語ですが、実は日常よく聞いている言葉でもあるのです。
今日のまとめ
・「助けて」は動詞 helfen ・日本人にはとっさに言いにくい ・こんな場面で使いましょう ・ドイツ・オーストリアの日常で使われるhelfenという言葉 ・Hilfe!で思い出す昔の話 |
「助けて」は動詞 helfen
ドイツ語で「助ける」というのは動詞 helfenを使います。このhelfenは少しややこしい活用をします。まず、その活用をみてみましょう。一般動詞の不規則活用と言います。これについては第34・42回で詳しく説明しています。
ich | helfe |
du | hilfst |
er(sie,es) | hilft |
wir | helfen |
ihr | helft |
Sie(sie) | helfen |
duとer(2段目と3段目)だけ母音が変わっています。これが一般動詞の不規則な変化になります。
「た~すけて~!」と緊急で叫ぶ時は、この不規則な変化をつかって叫びます。
Hilfe~!ヒルフェ~!です。
余裕があり、相手が目上であり、丁寧に「助けてください。」と言いたい時は、
Helfen Sie, bitte! ヘルフェンズィービッテ
という感じでお願いをします。これらお願いをする形の命令形についても第48・49回で扱いますので、確認してください。
日本人はとっさに言いにくい
この Hilfe! ですが、私たち日本人には、なかなか言いにくい単語になります。
なぜなら私たちは「助けて~」と叫ぶ時に口を大きく開けますが、Hilfe!と叫ぶ時は「イ」の部分にアクセントがあり、「イ」を大きな声で叫ばないといけない。これがなかなか難しいのです。
「宿題助けて」程度ならどんないい方でも構いませんが、本当の非常事態で叫ぶことがないようにしたいものです。
こんな場面で使いましょう
You Tubeの今日の番組で紹介したような崖から転落しそうな場面は、おそらくやってこないと思いますが、日常次の様な場面で使うことができます。
ジャムの便が開かない時 | Hilfe! |
宿題がわからない時 | Hilfe! |
ドアが開かない時 | Hilfe! |
冷蔵庫に野菜が上手く詰められない時 | Hilfe! |
パソコンが動かなくなった時 | Hilfe! |
背中のファスナーが上げられない時 | Hilfe! |
トイレに座っているのに紙が切れている時 | Hilfe! |
つまり、日常の生活で、近くにいる人に少し甘えて助けてもらいたい時に使える便利な単語なのです。
ドイツ・オーストリアの日常で使われるhelfenという言葉
この動詞helfenは旅行者としてドイツ・オーストリアに訪れた時もよく耳にします。
お店に入った時に、店員さんが真っ先に声をかけてくる定番のセリフがあります。それが
Kann ich Ihnen helfen? お手伝いしましょうか?
Kann | 助動詞 できるkönnen が ich に対して変化 |
ich | 私は |
Ihnen | あなたに対して(3格) 日本語では「あなたを」ですがドイツ語では動詞helfenは3格を取りますのでIhnenになります |
helfen | 助ける |
店員さんだけではなく、街で困っている人がいた時にも同じ言い方をします。
Hilfe!で思い出す昔の話
Hilfe!で思い出す、留学時代のエピソードが一つあります。
ある日、マンションのななめ向かいの家の、ドアの向こうから、Hilfe! Hilfeeeeee!と、か細い声で叫んでいるのが聞こえてきました。
私は、「どうしたんですか?」「大丈夫?」「何かあったのですか?」といろいろ声をかけるのですが、なにやらパニックになっているのか、Hilfe!しか言ってくれない。確かここにはかなり高齢の女性が住んでいたはず。ご近所の助けを借りようとあちこちドアベルを鳴らしたのですがどの家も留守でいない。そうだ私のマンション、隣は警察署だった。走って警察官を呼びに行くことに…。
警察が来ても女性はHilfe!を繰り返すばかり。そのうち消防士さんも来て、レスキューが来て、どんどん大ごとになり、最終的にはドアをすべて外して中に入りました。
女性は、お風呂場で小さな風呂桶にお尻をすっぽりはめたまま動けなくなっていました。幸い怪我はなく無事でした。
私は第一発見者、通報者として名前・住所・生年月日などいろいろ聞かれることに。
後日、女性の息子さんにお目にかかって話を聞いたのですが、女性は一人暮らしで、その頃、すでに高齢による痴呆が始まっていたのですが、その時はパニックになってしまい、Hife! しか言えなくなっていたそうです。その後、介護施設に入所されたとのこと。Hilfe! 知っててよかったと思った一幕でした。
次回 第27回は「非常事態で使うドイツ語 警察・救急・お医者さん」です。
写真 「シュテファン寺院/ウィーン・オーストリア」2020年撮影