第165回「大晦日の過ごし方」

きょうのまとめ

・大みそかは友人たちとにぎやかに

・私はもっぱら「こうもり」

・その瞬間に何という?

・ラジオやテレビでは「美しき青きドナウ」が流れる

大みそかは友人たちとにぎやかに

大みそかはSilvester(シルヴェスター/ジルヴェスター)と言います。

クリスマスは家族で静かに過ごしますが、一方、大みそかは友人たちとにぎやかに過ごすという人が多いようです。それが家族単位になったり、恋人や友人単位になったりします。

私も一度お誘いを受けて友人と一緒にパーティにいかせてもらいました。

それぞれがワインや料理を持ち寄って、10人くらいのパーティでしたが、実は31日は祝日ではないので、仕事がある人はあるのです。お昼までは普通に働いています。スーパーも開いていたように思います。

その後、自宅に戻り、パーティの準備を始める・・・いえ、肉の塊などは3日ほど前から準備に入っています。

20時や21時頃、順番に集まり始めて、話をしながら飲み始める。

日本と違うのは、他の部屋も見せてもらって、気が付けば家の主人の許可なくベッドルームでくつろぎながら話をしている人がいる。そんな光景が普通だったりします。

0時が近づき始めると、今年はどんな年だったのか、来年はどうしたいのかなんて話も始まります。

そうして、0時になる前にもう一度乾杯ができる準備を始めるのです。

その時は、南米から来た人がぶどうを持って来ていて、「0時の鐘と同時に12回の鐘と音と一緒に12粒全部食べ切れたら幸せになるのよ」ということで、全員が鐘の音に合わせてぶどうをほおばりました。


大晦日はもっぱら「こうもり」

オーストリアで大晦日に滞在している時は、ほとんどヨハン・シュトラウスのオペレッタ「こうもり」鑑賞になっていました。フォルクスオパーでは、大みそかの午後と夜に、国立歌劇場では夜に「こうもり」が毎年必ず上演されています。

日本ではベートーヴェンの第九が大晦日の風物詩になっていますが、オーストリアやドイツでは、そのような風習はありません。ただ、日本からの逆輸入として最近では第九を年末に演奏する機会も増えているようです。

オーストリア人にとって、ベートーヴェンはドイツ人ですから、大みそかはオーストリア人であり、ワルツ王であるヨハン・シュトラウスの「こうもり」なのです。ワルツやポルカ、バレエまである華やかな演目を夫婦で楽しむというのは、ひとつのスタイルなのでしょう。

もちろん普段よりもイベント感が強いので、はやばやと売り切れてしまいます。

大晦日の「こうもり」が面白いのは、何十回と見ている普段の「こうもり」と違うセリフや演出があるのです。

何が違うのか?シャンパンが本物になって舞台の上で歌手が飲んでいたり、トライアングルのかわいい音ががドラの音になっていたり、大みそかの夜まで働かせる支配人に対する「いたずら」をオーケストラも歌手も楽しんでいるのです。笑わずにいられましょうか!

また、大晦日の国立歌劇場の「こうもり」には、毎年ゲスト歌手が招かれます。何度か見ていますので、いろいろなゲスト歌手を見たのですが、あまり記憶にないのは、一番の記憶が印象に残りすぎているからでしょう。

その日は、日本から来たお客様を国立歌劇場にお連れして、自分はチケットが取れなかったので外で待っているという状況でした。そうすると、2幕が始まった時に、チケットもぎりのお兄さんに手招きされて1階の立見席に入れてもらったのです。そこにはパバロッティがゲストでやって来て歌い始めるところでした。なんて素敵な大晦日!最後まで見ることができましたが、そういう融通がきいたのも、30年も前だったからと懐かしく思います。

当時学生だった私には想像もできませんが、「こうもり」を見終わった多くの人たちは、パーティやレストランの予約を入れていたに違いありません。


その瞬間に何という?

その瞬間、つまり新年になった午前0時。友人や家族、もしかしたら教会の前の広場で、近くにいるいろいろな人と一緒にかわす言葉は

Frohes neues Jahr!(新年おめでとう!)

または、そこにシャンパンなどを手に持っていれば、

Prosit Neujahr!(新年に乾杯!)

のどちらかになるでしょう。もちろんここにはDuやSieの区別はありませんので、相手と同じように繰り返していいのです。


ラジオやテレビでは「美しき青きドナウ」が流れる

お祝いの言葉と同時に、場所によっては花火があがり、爆竹が大きな音を鳴らし、群衆の中にいれば相手かまわずキスされる(今はありえないですが)という状況です。なので、まだ若い頃は大みそかは本当に仲の良い友人と自宅で過ごすなど、あまりにぎやかな場所には行かないようにしていました。

ラジオやテレビでは午前0時になれば、国歌と共に第二の国歌と呼ばれているヨハン・シュトラウスの「美しき青きドナウ」が流れます。これにあわせて路上や家でワルツを踊る人達がいるのです。日本では考えられない習慣です。

宴が終われば、明け方自宅に帰ります。その後は家族と静かに過ごすようです。


次回は、第166回「オーストリアのお正月」

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